Cool Tokyo(東京湾沿岸発電所への冷却水供給とヒートアイランドの解消)

(1) 発電所は夏に弱い!
発電の源は高温側熱源と低温側熱源の温度差にあります。
東京湾沿岸の発電所では、高温側熱源は化石燃料(主に天然ガス)、低温側熱源は大気および東京湾の海水を使っています。
すなわち、発電(効率)は東京湾の大気と海水温に依存しています。

図-1 1)電力需要と気温,2)ガスタービンの吸気温と出力,3)蒸気タービンの冷却水水温と出力
1) 気温と電力需要
図-1(左)、赤い線が気温、青い線が発電所の出力です。東京湾の発電所はLNG-CC(液化天然ガスコンバインドサイクル)形式で、これには、ガスタービンと蒸気タービンがあり、2:1くらいの割合で出力を分担しています。
気温が高くなると空調の電力需要が増え、夏の一番熱い時に電力需要は年間のピークを迎えます。昨年は8月9日14時、気温は33.2℃で、東電の出力合計は5,093万kWでした。

 

2) ガスタービンの吸気温と出力
ガスタービンの出力は図-1(中)のように、吸気温度、気温に依存し、例えば、15℃を基準に外気温が35℃になると出力は14%くらい低減します。逆に気温が8℃くらいになると 6%*1)くらい増加します。
すなわち、夏の一番暑い日、電力が一番使われる時、出力は14%低下、そこに海洋深層水を用い吸気冷却をすると、基準からみて6%増、都合20%*1)増加します。

 

3) 蒸気タービン冷却水水温と出力
蒸気タービンでは、冷却水に海洋深層水を用いることで図-1(右)のように、夏のピーク時には4%~5%の出力増が期待されます。すなわち、夏の一番熱い時、発電能力は低下する訳ですが、海洋深層水を冷却水に使うことにより大幅に改善することができます。
更に、発電効率(燃費が良くなる)だけでなく、繁忙時を除き使わない発電所を建設しなくても良い、年間を通じ発電コストの低減に繋がる訳です。
ただし、冷熱は運べない、あるいは運べても2~3kmという技術者の常識がありました。

 

(2) 冷たいままで運べるか?
次に、館山で3.2℃だった水温が発電所に着く頃、何度になるか?見てみましょう。水温が上がる原因は送水管壁面からの熱の伝達と送水に伴う消費電力になります。

図-2 取水サイト、送水管ルートと東京湾沿岸火力発電所

1) 送水管外側の地温・・・地下約50mは年間を通じ15℃~18℃
地下の温度はこの図のように分布しています。地下50mくらいで一番低くなり、年間を通じ15℃~17℃くらいで変動しません。すなわち、送水管は地下50mを通すことで温度上昇は最小限ですみます。しかも大深度法で地上の所有権が及びません。試算では17.5℃と仮定してみました。
一方、送水に必要な電力、即ちエネルギーは深層水の流速(のエネルギー)になり、摩擦抵抗になり、最後は熱になります。流量、流速、損失水頭、必要電力などは解っていますから、あとの計算は簡単です。

 

2) 送水中の水温上昇は0.87℃
計算結果は、送水管壁面からの伝熱では、最初、取水口で3.2℃だった水温が、枡で・・・、千葉に届く時は3.82℃になります。
動力による水温上昇は、都合0.25℃、合計4.07℃、水温上昇は0.87℃と予測できます。
常識に反し、水温上昇は小さいことが解りました。
冷熱は運べる訳です。

 

(3) 冷熱供給事業収支
 発電所に冷熱を供給する事業収支を表-1に示します。 取水・送水能力3,000万m3/日(都心分含む)、インフラ総投資額約3,000億円(都心送水管含む) 、売上は発電量増分(買上)とし、約1,500億円/年*1)、税引き後利益700億円/年、ROA=24.3%となります。
 表-1 冷熱供給事業収支
補足*1)
タービンの圧力が増加するため、既往の発電所では、発電量の増加は図解法の通りにはなりません。
収支からは、現状の取水管が甲殻類の付着の清掃コスト、ブラックアウト対策の大きな予備出力の保持コストなど、総合的に判断する必要がありますが、発電事業者はタービンの改良が必要で面倒、新設時の課題として乗り出しません。
また、残念なことは東電は既にその任にはないこと、電力改革も事業形態を変更することにそそがれ、発電効率を上げることや冷熱を利用した省エネルギーには向いていません。

 

冷熱供給事業から見ると、冷熱の空調などへの直接利用や栄養塩、淡水、製塩などを含め、温排水を沿岸地域全域で活用(販売)できる効果が大きいことがあります。
更には外部経済になりますが、CO2削減効果は膨大(675万トン/年:日本の産業部門削減目標の1/4)、東京湾の環境保全(現状は発電所廃熱、都市廃熱の蓄積で自然状態より2℃高い)やヒートアイランドの緩和(別稿)による社会への貢献は極めて大きいものがあります。

 

しかし、発電事業者には積極的動機がない。一般企業、市民には手が出せないため、事業主体が見当たらない状況です。折角の資源(冷熱)も宝の持ち腐れ!
事業化へは、国民、都民、政治の出番です!

 

(4) 付随効果~ヒートアイランドの解消~
ヒートアイランドの主犯は発電所の廃熱にあります。
(電力会社が悪いのではありません。東京に一極集中過ぎたこと、皆が電力を使うことが原因です)
発電所から膨大な廃熱が東京湾、あるいは大気に放出されています。
発電所冷却水に海洋深層水冷熱を使うと廃熱を中和し、自然状態に戻すことになります。
東京湾の水温が下がると、都心の気温が下がることは別稿で示しました。

 

【Furthermore】
Cool Tokyo and Change The World V4(プレゼン資料 )資料室
Cool Tokyo and Change the World(技術要約)資料室
Cool Tokyo and Change The World (世界のエネルギー・水・環境問題の解決)の段階計画と概略収支V3 資料室
東京湾沿岸発電所の冷却水量、海洋深層水取水量、送水管路の最適化、事業収支の検討 資料室 要登録
技術資料 ヒートアイランドの解消
技術資料 東京湾沿岸の発電所に海洋深層水冷熱を用いたときの環境影響評価について
技術資料 マクロエンジニアリング学会シンポジウム2014レジメ 外部リンク
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