再生可能エネルギーの、基幹電源へのブレークスルー

1.発電方式ごとの、発電コストの限界と技術的隘路
再生可能エネルギーに依拠する発電方式は数多く実用化されているが、基幹電源(拡張性、安定性、負荷追随性、環境保全、コストに優れる必要がある)として決定版になれない原因は主に発電コストにある。そしてコストが下がらないのはそれぞれの発電方式の特性による限界、または技術的隘路がある。
冷たい言い方になるが、それぞれの発電方式、技術は長年の成果であり、コスト縮減の解決策はこの延長上にはない。エネルギー保存則は厳然と存在し、如何にハイテクと言えども、何もないところからエネルギーを生むことはない。
再生可能エネルギーに依拠する発電コストの低減には、新しい技術、あるいは発想の転換が必要である。

——-A.発電方式と限界、技術的隘路——
1)太陽熱発電
集熱温度が下がると発電効率は下がり、集熱温度を上げるとエネルギーロスが大きくなる
集熱温度とエネルギーロスはトレードオフ、現状の飛躍的な改良は困難→適地は日射量が大きい砂漠向き

2)太陽光発電
技術開発の途上であるが、発電効率と製品価格はトレードオフ
モジュールを広範囲に設置するため、集積過程でエネルギーロスは不可避

3)バイオマス発電
相応量の木材を集めることが至難
藻などを利用する場合、水分処理が不可避、コスト増

4)風力発電
風次第であり、基幹電源には不向き
風のエネルギーは生物にとって無駄ではないこと、
そのエネルギーを取ることは環境に広く影響すること

5)地熱発電
地殻が断熱材であること→地熱帯で可能
スケール処理→耐用年数の限界、維持管理費の増大
地熱発電でエネルギー問題が解決できるかのような主張は誤り
低温側熱源を空冷(冷却塔は合理的な方法ではあるが)にする限り、気温の影響を受け、夏場出力が大幅減とならざるを得ない

6)廃熱発電
実は廃熱のエネルギー量は多くはない
エネルギーを無駄にしないことは重要であるが、基幹電源にはなり得ない

7)海洋温度差発電(OTEC)
高温側を表層水にする限り、低温側との温度差が小さく、熱力学の定理より発電効率が小さくなり、コスト高は避けられない。(迯目英正; 小島紀徳; 伊藤拓哉; 鈴木誠一, 取水設備を含む個別最適化による海洋温度差発電コストの低減と評価, 日エネ誌95, 653-662 (2016) 参照

8)原子力発電
技術開発の途上であるが、現状では制御しきれていない
(あきらめるのは尚早であるが、安全確保、廃棄処理技術が前提)

9)火力発電
化石燃料は局在、価格は投機的(日本はこれを基幹電源にするべきではない)
低温側熱源を表層水(東京湾は閉鎖性海域、廃熱は貯まる)にする限り、夏場出力が大幅減とならざるを得ない→コスト大
技術開発の方向と限界
環境問題(CO2問題には異論もあるが、環境問題を抱えることは事実。化石燃料は別の使い方をすべき)

10)水力発電
大型サイトは開発済み
小型サイトは今から開発されるが、限定的、補完的、局所的役割
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評価: 
実際に再生可能エネルギーに依る発電方式が基幹電源になっていない現実がある。それぞれに、基幹電源になれない理由があり、どれだけ努力(技術開発)しても無理なものは無理。
 

2.冷熱の効果、活用されていない技術
技術屋は無いものねだりはしないことが原則であり、ないものとしていたものに低コストの冷熱がある。冷熱の効果は大きいのであるが、十分に検討されていない状況である。
ここでは、先ず冷熱は潤沢に低コストで得られること、また、冷熱を前提にした場合、従来あまり活用されていないが重要となる既往技術を次に示す。

 

 ——-B.冷熱の効果、活用されていない技術——–
(1)冷熱の効果
従来は存在しない前提であり、関連する検討例1)~12は少ないが、その効果は示されている。
特に、高温側・低温側温度差が小さいとき、熱交換面積が既定のとき、カルノー効率より低温側熱源温度(気温)が変化することによる熱交換量の制約で発電量は低減する。13

1) 海洋深層水による冷房技術の研究開発,森野仁夫,萩原運弘,月刊海洋 vol.26 No.3,1994.3
2) 展望・解説 海洋深層水の多面的利用–地球温暖化防止への活用,渡辺 裕,エネルギー・資源. 20(6) (通号 118),1999.11
3) 平成11年度エネルギー使用合理化海洋資源活用システム開発事業 新エネルギー・産業技術総合開発機構共同研究業務 「エネルギー使用合理化海洋資源活用システム開発-モデル実証研究成果報告書〔Ⅰ〕,社団法人 日本海洋開発産業協会
4) 海洋深層水の資源を利用した海洋バイオマス発電
5) 海洋深層水による冷房と水温制御,森野仁夫,月刊海洋 号外 No.22,2000.8
6) 火力・原子力発電所での海洋深層水の冷却水としての利用の可能性,角湯正剛,月刊海洋 号外 No.22,2000.8
7) 平成12年度エネルギー使用合理化海洋資源活用システム開発事業 新エネルギー・産業技術総合開発機構共同研究業務 「エネルギー使用合理化海洋資源活用システム開発-モデル実証研究成果報告書〔Ⅰ〕,社団法人 日本海洋開発産業協会
8) 深層水利用の調査および発電所への適用研究,竹田 浩文 ; 江口 譲
9) A PARAMETRIC STUDY ON POWER PLANT PERFORMANCE USING DEEP-SEA WATER FOR STEAM CONDENSATION,角湯正剛ほか,Pacon International(2002),547-556,2002
10) 平成13年度エネルギー使用合理化海洋資源活用システム開発事業 新エネルギー・産業技術総合開発機構共同研究業務 「エネルギー使用合理化海洋資源活用システム開発-モデル実証研究および基盤研究-要約成果報告書,社団法人 日本海洋開発産業協会
11) 「エネルギー使用合理化海洋資源活用システム開発」事後評価報告書,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 研究評価委員会,NEDO技術開発機構,2005.3
12) 平成20年度 高効率発電のための発電設備利用技術及び諸制約の調査報告書,社団法人 日本機械工業連合会 財団法人 海洋生物環境研究所,社団法人 日本機械工業連合会,2009.3
13) 地熱発電における気温の影響

 

      図-1

 

図-1 地熱発電における大気温(低温側熱源)と発電量
  
(2)活用されていない知見、技術
1)低コストで無尽蔵の冷熱源の存在
海洋深層水の研究はこの半世紀。ようやく特性、使い方が解ってきた。

 

2)海洋深層水取水技術の進歩
日本の海洋深層水取水工法は研究開発の延長。海洋深層水事業は低コスト取水工法から始まる。
→DW方式取水工法

 

3)送水
“水を運ぶエネルギー(コスト)は流量の3乗に比例して増加する”は流体力学の一般的言い方、別の見方では“流量の3乗に比例して安くなる”、同じ管径の場合、流量が1/100ならエネルギーは1/1,000,000になります。最適な管径と工事費は別途試算により流量におおよそ比例しますので、単位流量の使用エネルギーはその二乗に反比例します。
すなわち、すなわち、一般的送水管φ100~φ300の流量に対し、φ1,000~φ3,000の流量場合、使用エネルギー(送水コスト)は1/100になります。かくして、深層水冷熱は安く運べる、使える訳です。

 

(3)関連して、注目すべき技術 
1)熱交換プレート性能の向上
従来の研究は、低温側の表層海水は20~30℃前提で、研究余地は少なく、成果も小さいとされ、高温側熱源の更なる高温化にそそがれていた。

 

2)カリーナサイクルの特性
カリーナサイクルにおいて、作動流体アンモニア水の特性が発揮されるのは100℃前後のとき。一般的には温度が低く従来は十分には活用されなかった。
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3.提案(解決の方向性:低温側熱源が潤沢に得られることを前提にした、エネルギーロスを抑える、新たな最適化)
誰もやっていないため、取りあえず、試算をしてみた。詳細は○○を参照されたい。仮定条件に基づき、発電コストを算出したものであるが、立地条件に応じ、変形型が考えられ、多くの地域で適用可能となる。  

(1)太陽熱利用で、総合的熱効率の最適化
太陽熱は絶対値としても大きく、安定(人類が必要とする電力より遥かに大きい)
集熱~発電に至る全工程で、既往技術(使われていない技術・知見を含む)を利用しながら、熱効率を最大化させる問題に帰着する。

1)非集光型太陽熱温度差発電
試算例を〇〇に示す。ここで、日射量(集熱用地)、海洋深層水取水条件。スケールメリットが要件になるが、世界的にみれば非常に広範囲で可能
立地条件により、以下の代替案が考えられ、適用地域は大幅に拡大する(開発中)。
→OTECの発電コストに与える熱源補助装置の効果(日本エネルギー学会投稿)

 

2)陸上で集熱用地を確保できないとき→浮体式ソーラーポンド

 

3)海洋深層水の取水サイトに恵まれないとき→深層水熱源の代替方法

 
(2)地熱温度差発電
地熱温度は相対的には低い(高温で得るには施工上の制約がある)→本来、温度差発電向き
例えば、地熱発電の弱点
低温側を空冷(冷却塔)にするとき、出力への気温の影響が大きい
海洋深層水冷熱により、出力を維持できる
コスト面ではスケール対策(耐用年数、維持管理費)が重要になる。
これは弧状推進による熱伝導孔で解決できる。
かくして、地熱帯は無尽蔵に近いエネルギー源になる。
ただし、地殻が断熱材であり、一定量の熱量を得るには一定断面積(熱が通過する地下の敷地面積)が必要
現実的には地熱帯で、熱勾配に依存する。

4.結論
従来は高温側熱源を化石燃料に頼り、高温側・低温側との温度差を上げること、比較的イージーな方法で発電効率を改善してきたが、エネルギー需要が膨大化した今日、この方法は地球環境を破壊するに至った。
比較的低品位の熱源(地熱、廃熱、太陽熱:利用しないときはタダの廃熱)から、所定の電力を確保する技術が求められている。(太陽熱は膨大、エクセルギーも高いが、面積当たりでは希薄で、扱いにくい。)
最先端技術がすべてを解決してくれるというのは誤り。コスト縮減は、マクロエンジニアリング的に、地道に最適化を図ることから得られる。

【補足】
エネルギーも含め、従来、資源は局在するもの、濃いものに限られていたが、希薄な中から抽出、集約する技術が求められている。
類似するものに、海水に含まれるあらゆる成分(例えば、金、銀、ウラン、レアメタルなど)は膨大であるが、濃度は極めて希薄で十分に利用できていない。
筆者らは、エネルギーとともに、海水分離により、希薄な資源から肥料、淡水、塩など有用物を抽出すべきと考える。

 

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